「敏感期」や「臨界期」、みなさんは今までに耳にしたことはありますか?初めての子育てですと、子供の行動に対して不安になったり、イライラしたり、つい叱りたくなってしまったりと、様々な悩みや心配事が次から次へと出てきませんか?
私自身は子供がとても好きですし、保育園に勤務していた期間もあるので、全く子供と関わってこなかったということはありませんでしたが、いざ自分が母親になり、子供と一対一で向き合った時、どのように接してあげることが我が子にとって良い発達に繋がるのかを考えた際、何かもっと良い方法はないものかと常々考えるようになりました。そして保育士資格を取得する際に学んだ「臨界期」のことをふと思い出したことをきっかけに、モンテッソーリ教育の本や幼児教育・脳科学の本などをよく手にとるようになりました。
これからお話しする「敏感期」や「臨界期」のことを子育ての前知識として少しでも知っておくと、生活面・教育面・発達のことなど、肩の力を抜いてゆったり子育てに向き合えるのではないかと思います。
モンテッソーリ教育の「敏感期」とは
「敏感期」とはある限定された特別な時期
モンテッソーリ教育において重要なキーワードで「敏感期」という言葉があります。これは、子供が何かに強く興味を持ち集中して同じことを繰り返し、その分野の能力を獲得しようとする、限られた期間を表す言葉です。
参考:モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す! (知的生きかた文庫) [ 藤崎 達宏 ]
例えば「言語の敏感期」。私たちが母国語である日本語を苦労せずにマスターできたかというのは、言葉を話したくてしょうがないという「言語の敏感期」を経てきたからと言えます。一方、私たち親世代だと中学生から始めた英語が中々身に付かず残念な結果に終わってしまう方が多いのは、英語学習のスタートが言語の敏感期が終わってしまってからのスタートだったからと言えます。
上の表のように、人間の子供は、生きていくための能力を獲得するために、あるものに特別”敏感”になる期間があると言われているのです。
敏感期を知ることは子育ての予習をすること
1歳から3歳くらいになると、手根骨が発達し手の骨格ができあがり3本の指が上手に使えるようになってきます。この発達の時期と、子供がひたすらティッシュペーパーを出し続ける一見イタズラとも思える行動をする時期は、おおよそ同じような時期に現れます(ちなみに世界中の子供がするようです!)。つまり、この時期の子供は自身の発達途中にあるその手を使いたい、もっと上手に、もっともっとと強烈な衝動にかられるまさに「運動の敏感期」にあると言えるのです。
しかし、「運動の敏感期」を知らない親がこの行動を見て「またこんなイタズラをして!」とティッシュの箱を取り上げてしまい能力獲得の機会を奪ってしまうことは世の中でごくごく普通に起こっていることではないでしょうか。他にも、運動の敏感期にある子供であれば、ボタンがあれば押してみたくなりますし、つまみがあればひねっってみたいという強い衝動にかられているものです。これらを制止することは、子供自身が得たいと願う能力を獲得する絶好のチャンスを奪っていると等しく、とても残念で勿体ないことなのです。
「敏感期」には始まりと終わりが必ずある
塀の上でバランスをとりながら歩いてみたり、ソファーやベッドの上で飛び跳ねている子供の姿は、とても楽しそうで嬉しそうですよね?それはその子が運動の敏感期にあり、「今あなたはバランスをとる能力を高めなさい!」と言うミッションと向き合っている時だからです。実はその瞬間、子供の脳の中枢神経に「ドーパミン」が流れえもいわれぬ喜びを感じています。そしてその快感から、もっと上手にできるようになるためにと、同じことを繰り返すという行動をとるのです。
しかし、高校生や大人がソファーやベッドの上で飛び跳ねる行動をしたとしても、当然幼い子供たちが感じるような喜びを得ることはできません。なぜならば、この敏感期を過ぎるたあとで同じことをしたとしても、ドーパミンは出てこないからです。
ボタンを押しまくる子供、つまみをひねり続ける子供の行動や衝動に対して、子供自らが「生きるための能力を得るための行動」で、かつそれは「今しかない特別な時期」なんだと親が意識することができれば、「どうしてうちの子は…」という呆れた気持ちではなく「大切にしなきゃいけない時期なんだな」と余裕をもって子供に接することができるのではないでしょうか。
そして大切なことは「敏感期」には始まりがありそして終わりがあるということです。子供自身、やっていることが楽しくてしょうがない期間と思える期間というのは限られているのです。そこで親がすべきこととは、子供が必要な能力を獲得しようとしている自然の勢いがあるうちに、それを身につけさせてあげるための「環境」を適時整えてあげることなのです。
脳科学からみる「臨界期」とは
「三つ子の魂百まで」は科学的にも正しい
脳の神経細胞は誕生した瞬間がいちばん多くて、そのあとは減っていくのみです。生き残る神経細胞は30%程度で、その後、大人になってもその30%は変化しません。3歳までに残った神経細胞で一生を過ごすことになるのです。 ということは、3歳までに脳の土台ができあがり、一生をその脳で過ごすことになります。
(中略)反対に、この時期までに使われなかった神経細胞は淘汰されていき、それらの神経細胞を使う分野は苦手になってしまいます。
つまり、3歳までに神経細胞を刺激し、そのネットワークを広めていくことをしないと、後に苦労するということです。脳ではインプットが少ない神経回路は脱落してしまい、インプットされる情報が多いほど回路が強化されるというシステムとなっています。
よく人間をパソコンに例える話で「幼少期には性能の良い脳(ハードウェア)を育てるべき」というものがありますが、まさにこのことを言っているのでしょう。
(ちなみに、上の「モンテッソーリ教育×ハーバード式こどもの才能の伸ばし方」はもっと早く読んでおけば良かったと思うくらいとてもおすすめです!)
一生に一度の「臨界期」
引用元:チャイルドアイズHPより http://www.tact-net.jp/fc/ce/about/
臨界期のことを知るわかりやすい例として「生まれたての子猫の目に2週間程目隠しをしたままにすると、その後視覚能力を得ることはできない」という実験結果があります(残酷すぎます…)。このことから言えることは、たとえ遺伝情報に異常がなかったとしても、ある「重要な時期」に必要な刺激を受けることがなかった場合、その機能・能力を得ることが今後不可能となるということです。
別の例では「絶対音感」を身に付けさせたければ6歳くらいまでに適切なトレーニングが必要で、その期間を逃してしまうと、後に努力してもそれを身につけることは難しいということも言われていることも挙げられます。
大袈裟な話に聞こえるかもしれませんが、それぞれの機能・能力を得るには、一生に一度しかない「臨界期」の期間に十分な刺激が必要だということを知っておく必要なのです。
ちなみに幼児教育と脳科学についてとても深く紹介されている本では「幼児教育と脳」 (文春新書) [ 澤口 俊之 ]がとても参考になります。こちらの著書では「八歳までが勝負!」とあの「ホンマでっかTV」にも出演されている脳科学の澤口先生は記していますが、その理由もとても詳しく書かれています、深堀りしたい方にはおすすめです!
「敏感期」「臨界期」を知ることでできること
それぞれについてとても簡単に紹介させていただきましが、類似点のある内容だと思いませんか?それぞれのフィールドは違っていても「幼児教育」・「子育て」という大きな括りの中でリンクする分野があることがあるのだと考えましたし、私自身も最初は混同してしまうほどだったのですが、時間が経つにつれて点と点が線で繋がるような感覚を覚えました。
これらを知っているお父さん・お母さんと、全く知らないお父さんとお母さんに育てられた子供とでは、最初は小さな差かもしれませんが、成長するにつれて大きな差となることは間違いありません。なぜなら、敏感期や臨界期を知っている両親の元で育つ子は、人生に一度きりのチャンスを活かすことで自分に自信を持ち、さらに次のステップへと挑戦し続けることができるからです。
育児について悩むことがあれば、それが何かの敏感期なのでは?と考えることで、悩みや不安が「見守りたい」・「応援したい」という気持ちに変わっていきます。また、子供と一緒に遊ぶ時も「こんな遊びをすると〇〇の能力の発達に繋がるかも」とか、子供が欲しがるおもちゃについても”物によって”はですが「沢山もってるんだからいらないでしょ!」ではなく「〇〇の敏感期でもあるし、子供も興味を示しているし、与えてみようかな」と子供の能力獲得に繋がればと前向きな気持ちを持つことができます。
私自身、子供がただ欲しがる物ではなくて、「しかるべき時期なのかな」と感じたものについては(子供のレベルに合う乗り物や知育系のおもちゃなど)、お財布と相談しながらですが(*´-`)よく試しています。すると実家の両親からは「誕生日でもないのに、買い与えすぎなんじゃないの?」とよく言われます。ですが私の考え・主張は、決して甘やかしではなく「今こそがその時期」なのだから誕生日やイベントまで触れさせるのを待つのが勿体ない!ということなのです。結果、無駄なことしたな〜と思うことはほとんどなく、子供の集中した顔・満足気な表情を見るたびに、子供の無理のない自然な成長を嬉しく感じることができています。